日本全体で働き方の様々な改善が行われていますが、それでも残業時間の改善に至っていない会社はまだまだあるようです。
そんな中残業時間が毎月60時間にもなると、「会社を辞めたい!きつい!」と感じている人もいるでしょう。
今回は残業時間が長くて辞めたい!きつい!という人に向けて、対処法や体験談などをまとめてご紹介します。
【前提】残業が60時間を超えてきついのは甘えじゃない!
オイトマスタッフ
あなたの周りには「自分の頃には残業60時間なんて少ない方だ」「これくらいでへこたれるなんて、最近の若い奴は甘い」なんて残業を強要してくる上司や先輩はいませんか?
確かに上司や先輩が若い頃には残業は当たり前だったかもしれませんが、働き方はどんどん時代と共に変化しています。
2023年1月に公表された転職サービス「doda」のデータによると、2022年の平均残業時間は1ヶ月あたり22.1時間という結果でした。60時間ともなると毎月平均の3倍も働いていることになります。
このことからも「1ヶ月あたりの残業時間が60時間を超えてきつい」と感じるのは、決して甘えではないことが明らかでしょう。
残業が60時間を超えている場合は労働基準法違反の可能性が高い
残業時間が毎月60時間を超えているのは、身体的にも精神的にきつくなっていきます。しかしそれ以前に法律違反の可能性が高いです。
労働基準法では原則「1日あたり8時間、1週間あたり40時間まで」しか働いてはいけないことになっています。ただしたいていの会社は、労使間で36協定を結んで残業時間を設定しています。
36協定を結ぶと、以下の範囲で残業が可能になります。
- 一般労働者の場合・・・月45時間、年360時間
- 1年単位の変形労働時間制を採用し、その対象期間を3カ月超とした場合・・・月42時間、年320時間
1ヶ月あたり60時間の残業をした場合、1年に直すと720時間になります。この時点で毎月60時間が法律違反の可能性が高いことがお分かりでしょう。
しかしさらに例外があり、特別条項付き36協定を締結すると上記の範囲を超えて、残業が可能になります。
36協定を締結しており例外的事情がある場合のみ100時間まで認められる
「大規模なクレーム」や「機械のトラブル対応」など、臨時に特別なやむを得ない事情があったときには、労使間で話し合って特別条項付き36協定を締結することができます。
特別条項付き36協定を結ぶと以下の範囲に残業時間を延長できます。
- 時間外労働が年間720時間以内
- 時間外労働と休日労働を合わせて月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計については、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
ただし、特別条項付き36協定が発動できるのは年6回までと制限があります。
毎月60時間の残業の場合年間720時間なので、一見条件に当てはまっているようです。しかし「時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度」という条件に当てはまらないので、違法の可能性が高いです。
残業が60時間を超えるとどうなる?体調や心身の変化をご紹介
残業が60時間を超えると「疲れが取れない」「しんどい」といった症状が出るのは当然です。ではそのまま働き続けると、体調や心身にはどのような変化が表れるのでしょうか。
疲れやストレスを蓄積すると、うつ病や適応障害など重大な精神疾患のリスクが高まります。すでに似た症状が表れていないかチェックしてみましょう。
夕飯の時間が遅くなり自律神経が乱れやすくなる
残業で毎日帰りが遅いと、必然的に夕飯の時間も遅くなってしまいます。また夕飯が遅いと昼食との時間が空いてしまい、食事を多く取り過ぎてしまうことも多いはずです。
遅い時間に食事を摂ると血中にインシュリンが多く放出され、夜中に低血糖になり交感神経が働いてしまいます。
交感神経とは起きているときによく働く自律神経なので、自律神経が働くと体が活動状態になるのです。夜中に体に活動のスイッチが入ってしまうと、以下のような症状が表れます。
- 理由もなく夜中に目が覚めてしまう
- 寝つきが悪い
- 眠りが浅くて疲れが取れない
- 疲れているのに眠れない
さらに自律神経の乱れは、感情のコントロールがうまくいかなくなったりめまいや動悸がしたりといったことの原因にもなるので注意が必要です。
ストレス値が上がってうつ病になるリスクが高まる
長時間の残業を続けていると、身体的だけでなく精神的にもストレスが蓄積されていきます。過多なストレスがかかった状態が続くと、うつ病を発症してしまうかもしれません。
- 睡眠中に目が覚めてしまう
- 朝意図していない時間に早起きしてしまう
- 食欲がない
- 過剰に食べてしまう
- 休んでも疲れが取れない
- 憂鬱な気持ちになる
- 落ち着かない、不安になる
- ケアレスミスが増える
- 整理整頓ができなくなる
- イライラする
上記のような症状が慢性的に2週間以上続いている場合は、すでにうつ病の症状が出ている可能性があります。「ただ疲れているだけだ」と放置せずに、精神科や心療内科など専門機関を受診することをおすすめします。
土日も動き気力がなくなり寝て過ごすことになる
毎日長時間の残業をしていると、疲れ切ってしまって休みの日に何もする気が無くなります。「貴重な休みのはずが、気がついたら夕方だった」という経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
休みなのに動く気がしないご飯も食べてないや
おせんべい食べたけど— きん (@kinvertwo) March 20, 2021
おはようございます
土曜日の朝です
昨日も何度も目が覚めてしまい、この時間になってしまいました
休みで良かったです
今日も動く気がしないのでこのまま家に居ます— 氷室 翔 (@KqNimGUlJqTuujm) October 29, 2022
休みは働いた疲れを癒す時間でもありますが、趣味など好きなことをしてリフレッシュする時間でもあります。寝て過ごせば体力は回復するかもしれませんが、休みを過ごした充実感は得られませんよね。
また土日に寝て過ごして家にこもりがちになるのは、単に体が疲れているだけでなくうつ病や適応障害の兆候の恐れもあります。
「何をしても楽しくない」「やる気が起きない」という状態が続いているときは、精神内科や心療内科に相談してみてください。
残業が60時間を超えた時に取るべき対処法
残業が60時間を超えたときに取れる対処法は、7つあります。
対処法①60時間以上残業をした証拠を集める
まずは60時間以上残業をしたという証拠を集めておきましょう。残業の証拠があれば、会社に条件改善の相談をするときに使えますし、会社に損害賠償請求をするときなどの重大な資料になります。
また会社や上司がパワハラなどの手段に出た時に、この証拠を持って労働基準監督署に訴え出ることも可能です。
残業の証拠はタイムカードのコピーでもいいですし、給料明細にも残業時間が記載されているはずです。しかし残業の強要が会社ぐるみの場合は、タイムカードを早く打刻させたり、給料明細に虚偽を記載したりする可能性もあります。
そのような場合には、ボイスレコーダーを使って上司が「残業を強要している音声」を証拠として録音しましょう。証拠集めを抜かりなくしておくと、どんな交渉でも有利に進めることができます。
対処法②自分の仕事を効率化して残業時間を少なくする
「他の人は60時間以上の残業をしていないのに、自分だけ残業している」という場合は、自分の働き方を見直してみましょう。
意味のない作業や重複している業務があれば、整理して道筋を立て直すだけでずいぶん仕事がスムーズになるはずです。
「そんな時間なんてない」とおっしゃるかもしれません。しかし今効率化することで2か月後の残業が20時間以上減るとしたら、やってみてもいいと思いませんか?
また自分だけで効率化が難しい場合は、仕事の早い人の仕事の仕方を真似してみましょう。見てもわからないときは率直に質問してみるのもアリです。
最初は新しいやり方に慣れないかもしれませんが、徐々に慣れることで確実に仕事のペースはアップするでしょう。
対処法③他の人に仕事を振って自分の仕事量を減らす
長時間の残業をしている人は真面目で、どんな仕事でも自分で抱え込んでいるケースもあります。仕事の内容を整理して、新人の頃から任されていた仕事などは後輩に降ろすようにしましょう。
あなたが仕事を抱え込んでしまっているばっかりに、時間を持て余していたりいつまでも成長できていなかったりする人たちがいるかもしれません。
また担当者が休みなどの事情で臨時的に受けた業務でそのままやり続けている業務があれば、引き継ぎをして元の担当にお返ししましょう。
他の人に楽をさせるために、あなたが長時間の残業をする必要は一切ありません。
対処法④残業時間を減らしてほしい要望を上司に伝える
仕事の効率化を図っても、仕事を他の人に振っても残業が減らないときは、「残業時間を減らしてほしい」と率直に上司に相談してみましょう。
あなたの業務内容と他の人とのバランスを見て、あなたの業務量を減らしてくれる可能性があります。
ただし他の人も60時間以上の残業をしている場合は逆効果になってしまうので、おすすめできません。「お前だけ何を甘えたことを言っているんだ!」と叱られてしまうのがオチです。
対処法⑤転職活動を進めて内定を貰った後に退職する
職場に働きかけても無駄なときは、とっとと転職活動を始めましょう。仕事を辞める前に新しい勤務先を決めておけば、安定した収入が途切れないので焦って転職先を決める必要がありません。
世の中で残業時間が60時間を超えている会社は多くないので、どの会社でも「いい会社」に見えるのではないでしょうか。
しかし平日は仕事で潰されて休みの日は何もする気が起きないといった状態で、自力で転職活動をするのは困難ですよね。
忙しくて転職活動に時間がなかなか割けないといった場合には、転職エージェントを活用しましょう。転職エージェントはあなたの希望条件を伝えれば、近い企業の募集を知らせてくれます。
また履歴書の添削や面接の対策も無料で行ってくれるので、希望の会社に採用されやすくなるはずです。
対処法⑥会社がある市区町村の労働基準監督署へ相談に行く
労働基準監督署は全国各地に321署ある厚生労働省の機関で、労働基準法等の法律違反を取り締まる役目があります。
労働基準監督署に相談すると必要に応じて会社に立ち入り調査や是正勧告、改善のための指導を行ってくれます。
残業時間が60時間超えていることは労働基準法に違反しているので、労働基準監督署に申し出れば解決に繋がるかもしれません。
ただし労働基準監督署の指導で改善されるには時間がかかります。また労働基準監督署の指導や是正勧告には法的拘束力がないので、悪質な会社は無視する可能性もあります。
改善まで待っていられないというときは、転職を検討したほうが賢明です。
対処法⑦直属の上司よりも立場が上の人に相談する
正攻法なやり方ですが、上司の上の上司や経営陣に相談を持ち掛け、改善を求めるのも大切な対処法です。
特にあなたが今の会社が嫌いでないのならば、転職や労働基準監督署に訴え出るなどの強硬手段に出る前に改善できるように働きかけるべきです。
- 改善に向けて自分自身が取り組めること
- 会社に動いてもらう必要があること
上記の2点を整理して、相談を持ち掛けてみましょう。やれるだけのことをやったほうが、いざ退職する時にも後悔がないはずです。
残業が60時間を超えて会社を辞めた人の体験談
最後に残業が60時間を超えていた会社を辞めた方達の実際の体験談をご紹介したいと思います。もしかすると、あなたと似たような状態で会社を脱出した方がいらっしゃるかもしれません。
体験談①残業が60時間を超えて限界を迎えた20代女性
年齢:20代
勤続年数:2年
うちの会社は残業がとにかく多くて、60時間を超えることがザラでした。でも基本給が低くて残業しないとまともな金額にならないから、とにかく働いていました。一度体調が悪くて2・3日休んだことがあるんですけど、その分残業代と欠勤控除と罰金みたいなのが給料から引かれていて、1ヶ月分の給料がめちゃくちゃ低かったこともあります。それでもなんとか必死で働いていましたけど、ある休日に友人達と集まったときにみんなの給料が普通に働いて私より多いことを知って、ショックを受けて心が折れてしまいました。そこから会社を辞めるまでは1ヶ月とかからなかったです。あのとき現実を知れて本当によかったです。知らないままだったら今ごろ体を壊していたと思います。
体験談②残業60時間が連続して辞めた20代男性
年齢:20代
勤続年数:1年半
僕のいた会社は建築系の古い体質の会社で、上司も先輩も年の離れた人が多く「残業で徹夜した話」っていうのが武勇伝みたいになっていました。当然60時間程度の残業で文句を言ってたら「最近の若いもんは」と言って馬鹿にされます。僕も負けず嫌いなので、最初こそ気合で頑張っていましたけど、仕事に慣れてくるうちにどんどん仕事をこなすペースが速くなってきて、「残業時間を減らせる!」と喜んでいたら、あれもこれもと仕事を任されるようになって、結局残業は元通りに。結局続かなくて、2年もしないうちに辞めました。
体験談③残業60時間のせいで体調不良になった30代男性
年齢:30代
勤続年数:10年
入社当初は残業も少なくていい会社だと思っていました。会社で退職者が出るのは当然なのですが、退職してからの人員補充と退職者のバランスが合わず、在職者たちで業務を補うしかありませんでした。「いつか元通りになる」と信じて頑張っていましたが、ある時から眠れない、寝ても疲れが取れないといった日が続くようになり、病院に行くと心療内科に回されました。診断は「うつ病」でした。疲れのせいだと思っていた頭痛や肩こりも、うつ病の症状とのことでした。その日のうちに上司に連絡し、退職を決めました。残った人達には申し訳ないと思ったけど、これ以上は続けられません。
残業が60時間を超えて辞めたい!きつい!まとめ
残業が60時間を超えて辞めたい!と感じるのは当然のことです。しかしまずは自分の仕事のやり方を改善したり上司に相談したりするなどして、残業時間を減らす対処をしてみましょう。
しかし残業時間の改善は自分の力だけではどうにもならないこともあります。そのようなときは、転職するのもいい方法です。
働く場所は今の会社だけではありません。転職すれば、今より充実した人生を送れるかもしれません。