2022年に厚生労働省が公表したデータによると、労働者の半数以上が「仕事や職業生活に強いストレスがある」と回答したことがわかっています。
このように仕事や職場に何らかのストレスを抱えている方は多いですが、なかにはストレスが原因でうつ病になってしまう方もいらっしゃいます。
しかし会社を辞めたいほど辛い状態であっても、うつ病は目に見えない病気なだけに「退職させてもらえるか」不安ですよね。
今回はうつ病で仕事を辞めたい人に向けて、辞める方法や注意点を詳しく解説していきます。
うつ病を理由に退職することは可能!診断書を貰うのがおすすめ
先に結論を申し上げると、うつ病を理由に退職することは可能です。むしろ病気で仕事に支障が出ている状況で、働き続けることは必要ありません。
法律では退職について以下のように定められています。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。(民法第628条)
引用元:e-Gov検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
うつ病は上記の法律の「やむを得ない事由」に当てはまるので、即日退職することが可能です。しかしうつ病は見た目だけでは判断しにくく、「うつ病なので、辞めたいです」と言っても認めてもらえないかもしれません。
そのようなときに備えて、診断書を用意しておきましょう。診断書を見せながら、今の状態では働き続けられないことを説明すれば、退職を認めてもらえるはずです。
うつ病で仕事を辞めるべき?判断基準を解説
うつ病になっても症状によっては通院と服薬を続けながら、働いている人もいます。しかしうつ病は最初が大切で、医師の診断も受けずに無理に働くと心を完全に壊して社会復帰できなくなる可能性も高いです。
またうつ病の原因が仕事のストレスである場合、まずは仕事から離れることが一番の治療法になります。
最終的には医師の判断を仰ぐ必要がありますが、こちらの判断基準もぜひ参考にしてください。順番にご説明していきます。
判断基準①仕事のことを考えると動悸が止まらない
動悸というと不整脈や心不全、狭心症など身体的な病気をイメージする人も多いでしょう。しかしうつ病や不安障害などの精神疾患の症状場合も大いにあります。
うつ病の場合の動悸は、自律神経の乱れによるものです。自律神経は交感神経と副交感神経の二つの神経によって、体の機能を正常に保っています。
ところが仕事や職場の人間関係などで心に大きなストレスがかかると、自律神経が乱れて動悸やめまいを引き起こします。
誰でも休み中や休み明けに仕事のことを考えると、気持ちが重くなったことはあるはずです。しかし動悸がするほどのストレスは、かなり心に負担をかけています。
心が完全に壊れてしまう前に、過度なストレスから逃げるべきです。
判断基準②通勤中に理由もなく涙が出てくる
休み明けに関係なく、誰しも「仕事に行きたくない」と考えたことはあるはずです。また昨日失敗したことを「今日報告しなくてはならない」と思うと、憂鬱になってしまうこともあるでしょう。
しかしうつ病になると感情のコントロールがうまくできず、涙もろくなったり今まで泣かなかったような些細なことでも涙が出てしまったりするようになります。
そのため「仕事に行きたくない」とぼんやり考えると、たとえ人前でも涙が止まらなくなってしまうのです。
もちろん悲しかったり感動したりすると、涙が出るのは当然です。また泣くとスッキリして、気持ちが前向きになることもあります。
心の限界サインで涙が出るときは気持ちが軽くならずますます落ち込んでいくので、仕事という感情を不安定にしている原因を取り除かなくてはいけません。
判断基準③翌日仕事だと思うと夜眠れない
うつ病の人の約8割の人が不眠に悩まされています。うつ病になると眠りにつく前に「明日怒られたらどうしよう」「もし失敗したらどうしよう」などネガティブなことを考えてしまったり、不安な気持ちになったりしてしまって、なかなか寝付けなくなります。
本来眠りには、日中に受けた心身のダメージを回復させる役目があるので、十分に睡眠がとれない状態が続くとうつ病をより悪化させてしまいます。
「翌日仕事だと思うと不安で眠れない」といった不眠障害になってしまったときは、時間を気にせず「寝たいときに寝る」のが一番です。
そして寝たいときに寝ようと思ったら、会社に出社するのは難しいですよね。そのため一旦会社を辞めて、療養のための時間を作る必要があります。
うつ病の診断ツールを使ってセルフチェックしよう
ここではうつ病の診断ツールをいくつかご紹介したいと思います。インターネット上にはたくさんのうつ病診断ツールがあるので、利用してみてください。
あくまでセルフチェックなので最終的には心療内科などの専門機関の医師の指示を仰ぐことが一番です。
しかし「病院にかかるのには勇気がいる」といった方は、まずうつ病の診断ツールでセルフチェックを行ってから病院に行く判断してもいいかもしれません。
サイト名 | URL | 提供元 | 設問数 |
---|---|---|---|
うつ病ネット | https://www.alfresa-pharma.co.jp/general/utsu/self_check/index.html | アルフレッサ ファーマ株式会社
産業医科大学名誉教授中村 純 先生監修 |
16問 |
うつ状態のセルフチェック | https://www.ginza-pm.com/selfcheck.html | 銀座心療内科クリニック | 20問 |
うつ病
と症状の関連性をAIで無料でチェック |
https://ubie.app/lp/search/depression-d77 | ユビー
四谷ゆいクリニック 白井 優先生監修 |
回答によって変わる |
うつ病で仕事を辞める方法
うつ病で仕事を辞めるには、どのような方法があるのでしょうか?うつ病の退職方法は、3つあります。
オイトマスタッフ
ここでお伝えするのは全て法律にのっとった方法なので、ご安心ください。自分の状況に合った方法を選んで、退職の意志を伝えるようにしましょう。
方法①直属の上司に直接申し出る
まず一つ目の方法は通常の時と同じく、直属の上司に直接退職を申し出る方法です。「直属の上司に直接申し出る」のは社会人の基本的なマナーなので、円満退職を期待できます。
また直接上司に自分の状況を詳しく説明できるので、退職する理由を深く理解してもらうことができるでしょう。
ただし上司によっては直接会って話をすると、引き止めたり休職を提案してきたりする場合もあります。またうつ病は見た目にわかりにくいので、退職を納得してくれないかもしれません。
そのようなときに備えて、あらかじめ診断書を用意してくことが有効です。退職理由を伝えるときに診断書を見せながら説明すると、話がスムーズに進みます。
直属の上司に直接申し出るメリット
- 社会人のマナーを守ることができる
- 退職理由を詳しく説明できる
- 円満退職が期待できる
直属の上司に直接申し出るデメリット
- 引き止められる可能性がある
- 簡単に退職に納得してくれない可能性がある
方法②電話やメールで退職の意志を伝える
電話やメールで退職の意志を伝えるのも有効な方法です。「うつ病の症状が重い」「上司のパワハラがストレスの原因」といった場合、会社に行って直接伝えるのは困難ですよね。
また電話やメールで伝える場合、言いたいことをメモなどに書き出しておいて考えながら伝えられることもメリットでしょう。
ただし電話やメールでも伝える相手は、直属の上司です。電話に出た相手に伝言を頼んだり、部署の共有アドレスにメールを送ったりするなどはルール違反になります。
必ず上司より先に他の誰かがあなたの退職を知ることのないように配慮してください。
電話やメールで退職の意志を伝えるメリット
- 会社に行かなくていい
- 上司に直接会わなくていい
- 言いたいことをメモしながら伝えられる
電話やメールで退職の意志を伝えるデメリット
- 電話やメールで退職の意志を伝えるデメリット
- 伝える相手は直接の上司
- 円満退職できない可能性がある
方法③退職代行業者に依頼する
自分で退職を伝えるのが辛いというときは退職代行を利用しましょう。退職代行を利用すれば、会社に行くことも上司や会社と直接連絡することも必要ありません。
他の2つの退職方法とは違い、退職代行を使って退職するには費用が必要です。しかし未払残業代や有給消化の交渉もできるので、自分で退職を申し出るよりもお得になる可能性もあります。
退職代行業者に依頼するメリット
- 会社に行かなくていい
- 上司に直接会わなくていい
- 会社や上司と連絡を取らなくていい
- 引き止めにあわなくて済む
- 未払残業代や有給消化など退職の交渉ができる
退職代行業者に依頼するデメリット
- 費用がかかる
- 円満退職できない可能性がある
退職代行を利用して仕事を辞める際の流れ
退職代行を利用した退職は、退職代行業者にLINEやメールで相談・依頼するだけでほぼ完了です。大まかな流れをご紹介しましょう。
うつ病を理由に退職する際の流れ【自分で伝える場合】
うつ病を理由に自力で退職する流れは、以下のようになります。
うつ病で仕事を辞める時の注意点
うつ病で仕事を辞めるときに注意しておきたい点が3つあります。
うつ病で退職した後すぐに他の会社で働くことは難しく、まずはゆっくり時間をかけて療養する必要があります。
しかし会社を辞めたことを後悔したり経済面に余裕がなかったりすると、新たなストレスが生まれてうつ病を重症化させるかもしれません。
注意点①退職時に利用できる給付金や制度を確認しておく
会社を辞める前に、退職したら利用できる給付金や制度の条件や申請方法を確認しておきましょう。
支援策名 | 内容 |
---|---|
生活保護制度 | 最低生活の保障と自立の助長を図ることを目的として、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行う制度。 |
失業給付 | 退職後、失業中の生活を心配しないで、1日も早く再就職するために支給される給付金。在職中に雇用保険の被保険者であることが条件。 |
特別障害者手当 | 精神又は身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の人に支給される。 |
労災保険 | 従業員が仕事中や通勤途中にケガ・病気・障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度。退職後にも退職後にも支給申請することができる。 |
自立支援医療制度 | 心身の障害を完治・軽減するための医療について継続的な通院が必要な場合、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。 |
精神障害者保健福祉手帳 | 統合失調症、うつ病、てんかん、発達障害など特定の精神障害に当てはまると認められた場合に交付される手帳。様々な支援サービスが受けられる。 |
障害年金 | 病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代でも受け取ることができる年金。 |
注意点②一度休職して考え直す手段もあることを忘れない
退職すると自分の所属する場所や社会との繋がりがなくなってしまうので、不安を感じる人もいることでしょう。
うつ病で退職するのは、ストレスから離れてゆっくり療養するためです。不安なまま退職すると、かえってストレスが増えてしまいます。
いきなり退職するのが怖いときは、いったん休職してみるのも療養の方法の一つです。休職は退職しなくても長期間休むことができるので、ゆっくり療養することができます。
また休職中にたいていの会社は給料が出ませんが、うつ病の場合は傷病手当を申請できます。傷病手当を受給できれば給料の約6割を確保できるので、ある程度安定した収入が見込めるはずです。
休職した結果、退職するのも仕方のないことです。医師と相談しながら、今後のことをゆっくり考えるようにしましょう。
注意点③うつになった原因が会社にある場合、弁護士に連絡する
うつ病の原因が会社でのストレスであった場合「仕事が原因である」と認められれば、会社に責任を問うことができます。
注意点①でご紹介したように、労災が認められれば労災保険の請求が可能です。またそれとは別に損害賠償を請求できる場合があります。
損害賠償請求をするには2つのことを証明しなくてはいけません。
- 仕事のストレスが原因でうつ病を発症したこと
- 職場の安全配慮義務違反
とはいっても、証明するには「どのようなことをしたらいいのか」「何が必要なのか」自分で判断するのは困難です。このようなときは、退職する前に弁護士に相談しましょう。
弁護士は法律の専門家です。依頼すれば会社の労働条件や労働環境などの労働問題に関して適切に動いてくれます。
うつ病で仕事を辞めたい!まとめ
うつ病が辛くて会社を辞めるのは全く問題ありません。特に会社がうつ病になったストレスの原因であるのなら、1日も早く退職して療養に専念しましょう。
退職代行を利用すれば出社や自分で会社に連絡することもなく、スムーズに退職することができます。自力での退職が困難なときは、ぜひ相談だけでもしてみてください。